(小説・立ち読み)

芦辺拓 「メトロポリスに死の罠を」 ISBN:4575509647
http://www.futabasha.co.jp/new/vropp8000000mrqa.html
http://ashibe.hp.infoseek.co.jp/
・作者は鮎川哲也賞を受けた人らしい。
・作品自体は「自治体警察」が題材の一つとなる一風変わった作品。
アメリカではFBIと「自治体警察」(後者はいわゆる市警察とか保安官、ハイウェイパトロールとかのことを指し、所属する市や町、州での住民選挙で警察のチーフが市長・知事といった自治体の長とともに選ばれている。)の2本立ての治安体制。そのほかにも特定の地域や施設を対象とした警察があるようだ。
日本でも終戦後、民主化と言うことでその制度が一時期取り入れられたが、色々と弊害(地元との癒着、警察を持つことでの自治体の財政負担など)や思惑があったために、警察法の改正により「警察庁都道府県警察」と言う現在の形になった。(その時期には自治体警察と国家地方警察とあり、それぞれ管轄の独立した存在だったとか。たとえば、東京では23区には警視庁が「都」の警察としてあったが、それ以外の多摩地区では、三鷹市武蔵野市といった市町村が独自の警察を持つか、それを財政的に持てない地区では、国家地方警察東京本部・北多摩本部などが管轄していた。あんまり広域的な犯罪には対応しにくいような体制ではあるような。
ちなみに大阪では大阪市警察と言わず、東京に対抗して「大阪警視庁」と名乗っていたらしい。)
終戦後のこの制度の導入は、「中央集権国家体制の解体」と言うことに目的があったわけだけれど、この本のそれは、神奈川・長野・宮城などに見られる力のある県知事の登場、地方への権限委譲や市町村合併による力のある地方自治体の育成といった現在の流れや政策の延長線上にあるフィクションとして成立しているようだ。